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＜執筆者＞
東京農業大学卒業。農業法人に勤務中。有機農業なども経験。
家庭菜園や農業をしていると、アブラムシが発生した経験はありませんか。アブラムシは、家庭菜園や農業を行っている方にとって無視できない存在です。
アブラムシが大量発生した植物を放っておくと、ウイルスの影響で枯れてしまう可能性があります。アブラムシは繁殖力が非常に強いため、気付いたらかなり多くの数に増殖していることもあります。
今回は、アブラムシ駆除におすすめの農薬や殺虫剤を紹介します。
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目次
アブラムシの特徴
アブラムシは体長2〜4mmほどで、主な活動時期は春から秋です。アブラナ科の植物、窒素分が豊富な土、黄色の植物に寄ってきやすい習性を持っています。
繁殖能力が非常に強く、繁殖方法はメスだけでも繁殖ができる「単為生殖」です。1日で数匹〜十数匹出産し、産まれた子供は全てメスです。
産まれてくる時点でメスのお腹の中には子供が宿った状態で産まれてきて、10日前後で出産します。夏の暑さには弱く、寿命は約1ヶ月と短命です。
ウイルスを媒介して植物を枯らす原因にもなっており、草花にとっては有害な害虫として広く認知されています。また、長い間同じ農薬を使っていると抵抗性を持った個体が出てくるので注意が必要な害虫です。
アブラムシの農薬・殺虫剤の選び方
アブラムシの農薬・殺虫剤を選ぶ際には、以下のポイントを押さえて選ぶと効果的に駆除ができます。
1. 異なる系統の薬剤を何種類か選ぶ
アブラムシは、繁殖力が非常に強い害虫です。10日前後で出産して増殖を繰り返すため、農薬や殺虫剤に抵抗性がある個体が生まれやすいという特徴があります。
そのため、同じ成分の農薬・殺虫剤を使い続けると効果が薄れてしまうのです。そうならないためにも、異なる系統の農薬・殺虫剤をローテーションで使うようにしましょう。
ここで言う「系統」とは、農薬・殺虫剤に含まれる「成分」のことです。農薬や殺虫剤には必ず病害虫の駆除に有効な成分がいくつか入っています。
パッケージに書いていない場合は、裏面の「有効成分」などと書いてある欄を確認して、異なる系統の製品を選びましょう。
2. 形状や剤型で選ぶ
農薬や殺虫剤はさまざまな形状、剤型（薬剤の状態）のものがあります。手軽で簡単に扱える「スプレータイプ」のものや、植物の根から有効成分を吸収させるような「粒剤」、水に溶かして葉面に散布する「液剤」や「乳剤」などが代表的です。
比較的小規模でのアブラムシが発生するような家庭菜園であれば、手軽に扱えるスプレータイプのものを選ぶと良いでしょう。
しかし、農業など大規模に栽培している場合はスプレータイプのものでは対応し切れない可能性があります。農業などで使う場合は「液剤」や「乳剤」がおすすめです。水に溶かして葉面散布ができるので、タンクいっぱいに作った薬剤を動力散布機などで効率よく散布することができます。
3. 適合作物で選ぶ
農薬や殺虫剤は、どの作物にどの程度効果があるのかを試験して、安全性が確認されたものだけが製品として登録されています。そのため、同じ農薬がどの作物にも効果が期待できるという訳ではないのです。
農薬や殺虫剤には、必ず「適合作物」という記載がされています。その製品がどの作物に効くのか、厳重な試験を行ったうえで登録されているのでしっかりと守りましょう。
適合作物の記載にない作物に散布した場合、作物が枯れたり、残留農薬の濃度が高く出たりします。残留農薬の濃度が高い農産物を食べると、身体的に悪影響が及ぼされるので気を付けましょう。
アブラムシの農薬・殺虫剤おすすめ10選一覧
アブラムシにおすすめの農薬殺虫剤を、おすすめ度の高いものから紹介します。
1. ダントツ水溶剤
水溶剤とは、水に溶かして散布するタイプの農薬です。この製品は顆粒タイプになっており、泡立ちが少なく混合しやすくなっています。
散布後は、浸透移行性に優れているので次々と伸びてくる新梢にも防除効果があるので、繁殖能力が高いアブラムシにも効果的です。
持続効果が長く2〜3週間は効果があり、残効性に優れています。
2. アクタラ顆粒水溶剤
水に溶かして散布するこちらの製品は、雨に強いという特徴があります。多少雨に打たれても防除効果が持続するので効き目が長く、アブラムシには非常に有効です。
葉への吸収率が高いため安定して効果を発揮します。高い浸透性があるので作物全体に殺虫成分が行き渡り、葉の裏などに隠れているアブラムシにも効果的です。
3. アディオン乳剤
こちらは殺虫成分を含んだ薬液が乳化された殺虫剤です。乳化されているため本体薬液はドロドロになっており、水で薄めて使う必要があります。残効性に優れているため、長期間アブラムシに対して効果があります。
幅広い作物と害虫に適合しているので非常に万能な薬剤です。散布後の効き目も早いので、大量発生した際などでも効果があります。
4. モスピラン粒剤
こちらは植物の株元や土に混ぜ込む粒剤タイプの殺虫剤です。アブラムシの他にも、アオムシやコガネムシの幼虫などの幅広い害虫に対して有効です。
家庭菜園以外にも、規模の大きな農業などにも使える農薬です。
臭いが少なく効き目が長いので、非常に扱いやすくなっています。株元散布なので、アブラムシの天敵であるテントウムシなどにも影響が出にくいです。
5. ダイアジノン5％粒剤
こちらも粒剤型の農薬になります。主に大豆を作っている畑などに散布すると効果的ですが、アブラムシにも効果があるのでおすすめです。
幅広い作物と害虫に効果を発揮します。また、使用時期も選ばずに使えるので扱いやすい農薬です。家庭菜園向けよりも農業で使われることが多い農薬になります。
6. GFオルトラン粒剤
こちらの製品は、土の中に混ぜ込むだけでアブラムシを防除することができます。土に混ぜると、根から殺虫成分が吸収されて植物全体に殺虫成分が行き渡り害虫を防除することができます。
背丈が大きな草木に使用する場合は、一度の散布では植物全体に殺虫成分が行き渡らないので、数回に分けて散布が必要です。
7. 粘着くん液剤
こちらの製品の主成分は、食品に主に使われている加工デンプンです。そのため、安全性が非常に高く家庭菜園でも安心して使うことができます。
薬剤本体はドロドロしており、アブラムシに吹きかけることで物理的に窒息死させることができます。
そのため、薬剤に抵抗性がある個体に対しても有効なので、非常におすすめです。
8. ベニカXスプレー
この農薬は即効性に優れており、病気の予防と害虫駆除の両方に効果があります。中でもチャドクガに対して効果的ですが、アブラムシに対しても効果があります。
この薬液は浸透性に優れているので、時間が経っても有効成分が葉に残っています。持続効果も長いため、アブラムシの忌避効果に優れている農薬です。
スプレータイプで扱いやすいので多くの方が愛用しています。
9. ベニカマイルドスプレー
こちらは食品の成分から作られた殺虫殺菌スプレーになります。農薬を使わずに栽培する「有機農産物」にも散布が可能です。野菜類は収穫日前日であっても散布することができます。
含有成分は「澱粉糖化物」が含まれており、散布液で害虫を包み込んで窒息死させます。そのような物理的防除のため、抵抗性を持った個体が発生する心配がありません。
10. ロハピ
こちらは食品に使われている成分で作られている殺虫殺菌剤です。含有成分である脂肪酸グリセリルは、パンや総菜や洋菓子などにも使われている成分です。そのため、安心して使うことができます。
また、適合作物が多いためさまざまな作物に使うことができます。スプレータイプとなっており、家庭菜園でも扱いやすく非常に便利です。
即効性があるアブラムシの農薬3選
アブラムシに対して即効性がある農薬についておすすめ度の高いものから紹介します。
1. ベストガード水溶剤
さまざまな作物や害虫に対して効果を発揮します。家庭菜園の他にも農業の現場でも利用されている農薬です。
水によく溶けるので作物を汚す心配がありません。葉の裏側に潜む害虫にも素早く効果を発揮する万能薬剤です。
2. 粘着くん液剤
薬剤に含まれる主成分がデンプンで作られているので、ドロドロとした液体を吹きかけるだけでアブラムシが窒息死します。
物理的な駆除のため、薬剤が十分吹きかけられていれば即効性が高い製品といえるでしょう。
3 ベニカXファインスプレー
2種類の殺虫成分が含まれているため、薬剤に対して抵抗性があるアブラムシに対しても有効です。2つの殺虫成分の効果で即効性があり高い持続効果を兼ね備えています。
アブラムシに対して約1ヵ月効果が持続するので効果的です。
安全性が高いアブラムシの農薬3選
安全性が高い農薬について、おすすめ度の高いものから紹介します。
1. フマキラー カダンセーフ
主成分はヤシ油とデンプンで作られており、殺虫成分は含まれていません。害虫へ散布後は窒息死し、病原菌にも効果があります。子供、ペットがいる室内でも安心して使うことができるのでおすすめです。
2. 粘着くん液剤
主成分がデンプンで作られているため、家庭菜園でも安心して使うことができます。散布後は水でしっかりと洗い流すだけなので、殺虫成分に触れる心配はありません。
子供がいる場合でも安全に使える製品です。
3. パイベニカVスプレー
天然の除虫菊エキスを使用した殺虫スプレー剤です。そのため有機栽培にも使うことができます。収穫日前日まで使うことができるので、タイミングを選ばずに利用可能です。
アブラムシの他にも、アオムシやケムシなどの大きな害虫にも素早く効果を発揮します。
アブラムシの農薬はローテーション散布？
アブラムシは非常に繁殖能力が高い害虫です。条件が揃っていれば、一匹から産まれる子供は毎日数匹〜十数匹にもなります。産まれた子供は10日前後で出産するので、繁殖スピードも非常に早いです。
そのため、同じ薬剤を使い続けると抵抗性を持った個体が産まれてくるので、同じ薬剤を散布しても効かなくなってくるのです。
そうならないためにも、アブラムシ防除をする際には基本的に複数の異なる系統の薬剤を準備しておく必要があります。
アブラムシ防除に有効な殺虫成分として代表的なのは、有機リン系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系などがあります。
他にも有効な成分はありますが、このような成分が異なる農薬・殺虫剤を準備してローテーションで使うことで、アブラムシを効率的に防除することができるのです。
アブラムシの殺虫剤が効かない時の対策
アブラムシを駆除する方法は、殺虫剤以外にもいくつかあります。アブラムシに殺虫剤が効かない時の簡単にできる防除法について紹介します。
①アブラムシの習性を利用する方法
アブラムシは「黄色を好む」習性があります。黄色の粘着テープを近くにぶら下げておくだけで、簡単にアブラムシを駆除することができます。
②コンパニオンプランツを利用するという方法
コンパニオンプランツとは、近くに置くことで害虫などを寄せ付けない効果がある植物のことです。アブラムシ除けには「マリーゴールド」や「カモミール」が効果的です。
③光を嫌う習性を利用する方法
アブラムシは光を嫌う習性があるので、日中日向に出すことでアブラムシを追いやることができます。
まとめ
家庭菜園や農業の大敵であるアブラムシは、放っておくと大量発生して大変なことになってしまいます。
アブラムシは、繁殖能力が非常に強く薬剤に抵抗性がある個体が発生するリスクが高い害虫です。そのため、異なる系統の農薬・殺虫剤をローテーションで使うことで増殖を防ぐことができます。
